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夏の塩/夏の子供(榎田尤利)

味覚障害の青年・魚住真澄は、学生時代の友人・久留米充のアパートに居候をしている。味覚を失ったのは、生きる意味を見失ったから? インド人の血を引く隣人サリームに、久留米の元彼女のマリ。日常に潜む生と死、悲しみと喜びの物語。


大切な人を事故で失った魚住真澄は死を意識し、自分にとって久留米充がどれほど特別な存在かを知る。出逢いと別れを繰り返し、人は生きていく。自分の居場所を探しながら。誰かの幸福を願いながら。大切な人を得た時、世界が広がる──。

 

【感想】★★★★★

魚住はビックリするくらい不幸のオンパレードの人生を歩んでいます。親に捨てられて施設で育ち、その後、3度も養子に行っています。そんな事ってあるんですね~。いっそ養子なんかに行かず施設で育った方が平穏な生活が送れたでしょう…。養子に行った先では、虐待に遭ったり変な宗教をやっていたり…。すっかり笑顔も消え、自分の感情を殺す事に慣れてしまった魚住ですが、3度目の養子先で漸く優しい家族を得て、少しずつ笑顔を取り戻して行きます。そんな矢先、家族を一度に交通事故で亡くしてしまいます。その後も、担当カウンセラーの先生が自殺したり、魚住の彼女を奪った男に強姦されたり…。
お話の冒頭では、魚住は大学時代からの友人・久留米の部屋に勝手に居付いています。この時の魚住は味覚障害・嗅覚障害の上に不能に陥っています。本人は長い不幸人生の内に、すっかり自分の身に起こる事に対して鈍感になっていて、普通ならこんなに身体機能に障害が出ていたらお医者にかかったり大騒ぎするところだと思うのですが、妙に呑気に淡々と受け入れています。心が壊れてしまってもおかしくないような出来事があまりにも次々に降りかかってくるので、無意識に身に付けた自分を守る術なんでしょう。
魚住の不幸は留まる所を知らず、この後も強姦男が再び現れて嫌がらせをされたり、仲良くなった少女が目の前で交通事故に遭って亡くなってしまったり…。魚住のちょっと天然が入った性格のお陰でイタさが和らいでいるものの、これでもかと不幸続きでかなりヘビーです。特に、この少女の死はショッキングでした。親のせいでまだ中学生なのにHIVウイルスのキャリアで、それを周りにも知られているせいで学校でも黴菌のように扱われ、唯一の親の母親も出て行って、可愛げのない態度をとりながら頑張って自分を守っている少女が、ちょっと風変わりでボケた所のある魚住に少しずつ心を開いて行って、笑顔を見せるようになったりして、漸くこれから少しは毎日を楽しく過ごせるようになりそうっていう時だったのに! せめて最後に魚住と仲良くなれて良かったとは思いますが、何だかとても複雑です…。
不幸や身近な人の死などに慣れ、当たり前の事のように淡々と受け入れ、その悲しみや苦しみに鈍感になって麻痺させる事で自分を守って来た魚住でしたが、ついに限界が訪れます。目の前で起こった少女の死をきっかけに麻痺していた感情が溢れ、身近な人の死に対して強い恐怖を抱くようになります。そして久留米が死んでしまったらという恐怖に取り憑かれ、それから逃れるために自殺まで図ります。普通なら起こってもいない架空の事に怯えても仕方がないと思う所ですが、魚住にとっては身近な人の死は当たり前のように起こる出来事で、今まで麻痺していた分の感情もまとめて襲いかかって来て、本当にパニックになってしまったんですね~。むしろ、これ程の辛い目に遭い続けて、これまで一度も自殺を図らなかったのが不思議なくらいだったから、ついに来る時が来てしまったって感じで…。マリちゃんが不安を感じて来てくれて、本当に良かった。
このお話、魚住だけでなく、様々な事情を抱えた人が本当に多く登場します。ここまで次々と出てくると、人は皆、多かれ少なかれ生きていれば色々あるんだな~と…。特に親絡みの問題が多かったので、皆それぞれ親から離れて一人立ちして、何とか前向きに頑張って行こうとしています。──そんな人たちだらけの中、不思議と久留米は何の問題も抱えていません。久留米は魚住と恋人になったって事が最大の問題なのかも知れません。(笑) 何せ、久留米から絶対に離れたがらないのかと思った魚住は、意外とあっさりと海外留学を決断しています。それに際して気にしていたのは、久留米の事よりもパニック障害についてだったみたいだし…。最低3年の予定の留学でしたが、更に更に延長して、お話の中では戻って来る気配もありません。やはり研究はアメリカの方がいいんだろうし、ずっとこのままなのかな~?
不幸だらけの魚住でしたが、義理の祖父母には大切にされていたようで、特にお祖父さんのぶっきらぼうな優しさがジーンと来ました。最初はどうなるかと思いましたが、不幸だけじゃなく、いい友人や恋人に恵まれて、最後は何だか温かな気持ちで読み終わりました。
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